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自筆証書遺言の弱点を克服する「遺言書保管制度」とは?メリット・手続き・注意点を解説

自筆証書遺言の弱点を克服する「遺言書保管制度」とは?メリット・手続き・注意点を解説

ご自身の財産を誰にどのように残すかを書き記す「遺言書」の中で、費用をかけずに個人でいつでも作成できるのが自筆証書遺言です。

しかし、従来の自筆証書遺言には「紛失や破棄のリスク」「書き方の不備による無効」「相続開始後の複雑な手続き」といった弱点が存在しました。

こうした弱点を克服し、安全かつ確実に遺言を残すために創設されたのが法務局による「自筆証書遺言書保管制度(遺言書保管制度)」です。今回は、本制度の仕組みやメリット、利用時の注意点について専門的に解説します。

1. 自筆証書遺言が抱えていた「3つの弱点」

自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、個人で保管することに起因する法的リスクが存在していました。

① 紛失・未発見・改ざんや破棄のリスク

自宅の仏壇や引き出しなどに保管していると、亡くなった後に家族に発見されなかったり、第三者によって隠蔽・破棄・改ざんされたりする危険性がありました。

② 形式不備による無効リスク

自筆証書遺言は全文自書(※財産目録を除く)や日付・署名・押印など民法上の厳格な方式が定められています。法律上の要件を満たしていない場合、遺言書全体が無効となってしまうおそれがありました。

③ 相続開始後の「家庭裁判所の検認手続き」が必要

残された相続人が遺言書を執行・使用するためには、家庭裁判所に申立てを行って「検認」という検証手続きを経る必要があり、これには数週間から数ヶ月の手間と時間がかかっていました。

2. 遺言書保管制度が弱点を克服できる4つの理由

2020年(令和2年)7月10日から施行された「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」に基づく遺言書保管制度を利用することで、これらの弱点を解消できます。

① 法務局で厳重に保管され、紛失や改ざんを防げる

作成した自筆証書遺言の原本と画像データが法務局(遺言書保管所)で厳重に保管管理されます。第三者による偽造・変造・破棄や、破棄・紛失のリスクが完全に排除されます。

② 職員による外形的な形式チェックが受けられる

法務局の窓口で保管申請をする際、遺言書保管官が民法の定める自筆証書遺言の方式に適合しているか外形的な確認を行います。これにより、日付の不備や署名漏れといった形式上の誤りによって無効になるおそれを相当程度防ぐことができます。

③ 家庭裁判所の「検認手続き」が不要になる

公的機関である法務局で保管されているため、相続発生後に家庭裁判所での検認手続きを行う必要がありません。相続人は法務局から「遺言書情報証明書」の交付を受けることで、速やかに預貯金の解約や不動産の相続登記手続きへ進むことができます。

④ 相続人への通知制度により隠されたり気づかれなかったりするのを防げる

相続人の一人が遺言書情報証明書の交付を受けたり閲覧したりした場合、他の関係相続人等に対して法務局から通知が届く仕組み(関係遺言書保管通知)が整っています。また、生前に指定しておくことで、被相続人の死亡事実を法務局が確認した際に指定通知対象者へ自動的に連絡がいく「死亡時通知」の仕組みも用意されています。

なお、保管申請にかかる手数料は1件につき3,900円と、公正証書遺言と比較しても非常に低廉に設定されています。

3. 遺言書保管制度を利用する際の注意点

多くのメリットがある制度ですが、利用にあたってはいくつかの実務上の制限や注意点が存在します。

  • 遺言者本人が直接法務局へ出頭する必要がある 本人の意思確認を厳格に行うため、代理人による申請や、法務局職員による出張・訪問での保管手続きは認められていません。必ず遺言者自身が出頭しなければならないため、自力で法務局へ赴くことが難しい場合は利用が困難となります。また、申請時にはマイナンバーカードや運転免許証などの顔写真付き公的身分証明書が必要です。
  • 指定された様式(A4・余白ルール等)を守る必要がある 法務局でスキャンして画像データ化するため、用紙はA4サイズ指定、無封(封をしない)、片面印刷、規定の余白(上5mm、下10mm、左20mm、右5mm以上)を確保するなどの細かな様式ルールが定められています。
  • 内容の実質的な有効性や遺留分までは保証されない 法務局の確認はあくまで「外形的な形式チェック」にとどまります。記載された内容が法的に適切であるか、遺言能力が十分であったか、他の相続人の遺留分を侵害していないかといった内容面のアドバイスや実質的効力の保証までは行われません。

4. まとめ

法務局の遺言書保管制度は、従来の自筆証書遺言が持っていた「紛失・改ざんの恐怖」「形式不備による無効」「検認の手間」といった弱点を低コストで解消できる大変優れた仕組みです。

ただし、法務局は遺言の具体的な内容や文言の精査、遺留分をはじめとする親族間の紛争予防についての相談には乗ってくれません。後日のトラブルを防ぎ、ご自身の想いを確実に実現するためには、事前に専門家へ相談して文案を検討した上で制度を利用することが推奨されます。

遺言書の作成や保管制度の利用手続き、相続対策についてご不明な点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事について

公開日
2026.08.21
内容確認日
2026.08.21
監修
荒関誠人(行政書士・中小企業診断士)

参考文献・出典

  • 法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)/民法(自筆証書遺言の方式)

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