公正証書遺言とは?作成の要件・メリット・自筆証書遺言との違いを解説

ご自身の財産を希望通りに引き継がせ、将来の親族間のトラブルを防ぐために遺言書を作成する際、最も安全で確実な選択肢として推奨されるのが「公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)」です。
今回は、公正証書遺言の法的な定義や作成要件をはじめ、他の方式と比較したメリット、作成時の注意点について詳しく解説します。
1. 公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、民法で定められた普通方式の遺言の一つであり、公証役場において法律の専門家である公証人が関与して作成する公文書形式の遺言書です。
自筆証書遺言のように個人だけで作成する方式とは異なり、公証人が遺言者の真意や法的有効性を確認しながら作成するため、非常に高い信頼性を持っています。
法律(民法969条)が定める作成要件
公正証書遺言を有効に作成するためには、民法第969条に基づき、以下の厳格な方式に従う必要があります。
- 証人2人以上の立会いがあること
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授(口頭で伝えること)すること(※口がきけない場合は、通訳人の通訳による申述または自書でも可能)
- 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させること
- 遺言者および証人が筆記の正確さを承認した後、各自が署名・押印すること(※病気などで遺言者が署名できない場合は、公証人がその旨を付記して代書することが認められています)
- 公証人が、その証書が所定の方式に従って作成されたものである旨を付記し、署名・押印すること
2. 公正証書遺言を選ぶべき4つのメリット
自筆証書遺言と比較した場合、公正証書遺言には法的に極めて強力なメリットが存在します。
① 形式不備や内容の不備による無効リスクがほとんどない
自筆証書遺言は、日付の記載漏れや訂正方法の誤りなどにより無効となるケースが少なくありません。これに対して公正証書遺言は、公証人が法律に基づいて文案を精査して作成するため、形式違反などで無効になる心配がほぼありません。
② 原本が公証役場で保管され、偽造・改ざん・紛失を防げる
作成された公正証書遺言の原本は公証役場で厳重に保管されます。そのため、自宅で保管する場合のような「紛失」「第三者による破棄・隠蔽」「変造」といったリスクが完全に排除されます。
③ 家庭裁判所の「検認手続き」が不要で、速やかに執行できる
自筆証書遺言(※法務局の保管制度を利用していないもの)の場合、相続発生後に家庭裁判所で「検認(けんにん)」という検証手続きを経なければ名義変更や預貯金の解約ができません。公正証書遺言であれば検認手続きが不要であるため、相続開始後すぐに遺言内容を実行へ移すことができます。
④ 文字が書けない方や病床の方でも作成可能
手体麻痺や病気などで字が書けない方でも、公証人が代署することで作成可能です。また、高齢や病気で公証役場へ出向くことが難しい場合には、公証人に自宅や病院、施設へ出張してもらって作成することもできます。
3. 作成前に知っておくべき注意点
安全性に優れた公正証書遺言ですが、以下の点にはあらかじめ留意しておく必要があります。
- 公証人手数料などの費用が発生する 作成にあたっては、遺産の額や相続・遺贈を受ける方の人数に応じて定められた公証人手数料が発生します。
- 証人2人の確保が必要(欠格事由への注意) 手続きには証人2人の立会いが必要です。ただし、推定相続人や受遺者(財産を受け取る人)、およびその配偶者・直系血族は利害関係があるため証人になれません(欠格事由)。適当な証人が身近にいない場合は、公証役場や専門家に依頼して証人を手配することが可能です。
- 公証役場からの自動通知はない 全国の公証役場で作成された公正証書遺言は「遺言検索システム」に登録され、死後に相続人が検索・照会できますが、公証役場から遺族へ自動的に連絡が入るわけではありません。あらかじめ遺言書(正本・謄本)の存在を信頼できる家族や遺言執行者に伝えておく必要があります。
4. まとめ
公正証書遺言は、将来の相続トラブルを防止し、ご自身の想いを最も確実な形で実現できる優れた制度です。
トラブルの起きない遺言書を作成するためには、遺留分への配慮や遺産配分の文言の調整、事前の資料収集など丁寧な準備が不可欠となります。
公正証書遺言の文案作成や手続きの準備でお困りのことがございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
About
この記事について
- 公開日
- 2026.08.22
- 内容確認日
- 2026.08.22
- 監修
- 荒関誠人(行政書士・中小企業診断士)
参考文献・出典
- 民法第969条
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