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遺言執行者を指定する最大のメリットとは? 相続人による手続き妨害を防ぎ、遺志を確実に実現する法的な盾

遺言執行者を指定する最大のメリットとは? 相続人による手続き妨害を防ぎ、遺志を確実に実現する法的な盾

遺言書を作成する際、「誰にどの財産を遺すか」という内容ばかりに気を取られ、その内容を「誰がどのように実行するのか」という点を見落としてしまうケースは少なくありません。

どれほど明確な遺言書を遺したとしても、いざ相続が開始した後に、相続人の一部が遺言内容に不満を抱いて手続きに協力しなかったり、勝手に遺産を処分してしまったりするトラブルは、実務において頻繁に発生します。

こうした事態を防ぎ、ご自身の遺志を確実に実現するために欠かせないのが「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」の存在です。今回は、遺言執行者を指定しておく最大のメリットである「相続人による手続き妨害の防止」を中心に、その法的効果と実務的なメリットを解説します。

1. 遺言の内容を実現するリーダー「遺言執行者」とは

遺言執行者とは、亡くなった遺言者に代わって、遺言の内容を実現するための様々な手続き(執行行為)を行う権限と義務を持つ人のことです。

現行の民法において、遺言執行者は「遺言の内容を実現すること」が職務であり、特定の相続人の味方ではなく、あくまで中立で厳格な執行機関としての地位が確立されています。 遺言執行者は、就職を承諾したときは直ちにその任務を開始する義務を負い、相続財産の調査、財産目録の作成と相続人への交付、預貯金の解約払戻し、不動産の名義変更登記など、遺言の執行に必要な一切の行為を行う権利義務を有します。

2. 最大のメリット:相続人による「勝手な処分や妨害行為」を法的に無効化できる

遺言執行者を指定しておく最大のメリットは、一部の相続人が自身の利益のために遺産を勝手に売却したり、処分したりする手続き妨害を、法的に防止できる点にあります。

① 相続人に対する処分権限の制限(民法1013条1項)

民法第1013条第1項には、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」と定められています。 遺言執行者が指定されている場合、執行に必要な範囲の財産の管理処分権はすべて遺言執行者に独占的に帰属するため、相続人はその財産を動かす権限を失います。

② 相続人が行った無断処分の無効(処分行為の絶対的無効)

もし、遺言執行者が指定されているにもかかわらず、相続人の一人が遺言に反して勝手に相続財産(不動産や預貯金など)を第三者に売却・譲渡してしまった場合、その相続人が行った処分行為は原則として「無効」となります。 これは、もし勝手な名義変更登記などがなされてしまっても、遺言執行者がその妨害を排除し、遺言に基づく真正な登記手続きに回復させることができる強力な権限(妨害排除請求権)を持っていることを意味します。

【重要】遺言執行者が指定されていない場合の危険性

一方で、遺言執行者が指定されていない場合、相続人が勝手に行った処分行為は原則として無効にはなりません。 例えば、遺言書で「甲不動産を長男に相続させる」と書かれていても、遺言執行者の指定がない間に、借金を抱えた二男が勝手に法定相続分で共同相続の登記を入れ、自己の持分を第三者に売却して登記を移してしまった場合、その取引を覆すことは非常に困難になります。 このように、「遺言執行者が指定されているかどうか」が、相続人の暴走や妨害を未然に防ぐ決定的な境界線となります。

3. 実務的なメリット:相続手続きにおける「手間・暇」と「時間」を大幅に削減できる

遺言執行者を指定することは、相続人間の対立を防ぐだけでなく、手続きに関わる全員の事務負担を劇的に軽減する実務的メリットもあります。

① 相続人全員の「署名・実印」が不要になる

遺言執行者がいない場合、遺贈の履行や不動産の登記、預貯金の解約手続きを行うためには、原則として共同相続人全員が関与し、協力し合う必要があります。非協力的な相続人が一人でもいる、あるいは相続人同士が不仲である場合、実印の押印や印鑑証明書の提出を拒否され、手続きが完全に膠着してしまいます。 しかし、遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が単独(単独の署名と実印)で各種金融機関の手続きや登記申請、換価処分等を進めることができます。他の相続人の関与や承諾を一切必要としないため、迅速かつ円滑に遺産を分配できます。

② 紛争を未然に防ぎ、迅速な保全(対抗要件の具備)が可能

2019年の民法改正により、特定財産承継遺言(「相続させる」旨の遺言)であっても、法定相続分を超える部分については「登記等の対抗要件」を先に備えなければ、第三者に対抗できないというルール(対抗要件主義)が確立されました。 遺言執行者が指定されていれば、相続開始後、直ちに受益相続人のために対抗要件を具備する(=速やかに相続登記を申請する)行為を単独で行うことができるため、他の相続人の債権者が財産を差し押さえる前に権利を確定させ、財産を守り抜くことができます。

4. まとめ

① 遺言執行者を指定する最大のメリットは、民法第1013条に基づき、相続人による相続財産の勝手な処分や遺言執行の妨げとなる行為を法的に禁止・無効化できる点にあります。遺言執行者が存在しない場合は相続人の処分行為が有効となってしまうおそれがあるため、事前の指定は遺言の安全性を高める最大の防壁となります。

② 実務的にも、遺言執行者を定めておくことで、不仲や非協力的な相続人がいる場合であっても、全員の署名や実印を求めることなく、遺言執行者単独で預貯金の払戻しや不動産の登記手続きを迅速に進めることが可能となります。

③ 遺言執行者には相続人を指定することも可能ですが、高度な法的判断や厳格な手続き、さらに相続人間の利害対立を中立的に整理することが求められるため、実務をスムーズに完了させたい場合は、弁護士や行政書士などの法律専門家をあらかじめ指定しておくことが推奨されます。

当社では遺言執行業務も行っております。遺言執行者の指定や、ご不明な点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事について

公開日
2026.08.30
内容確認日
2026.08.30
監修
荒関誠人(行政書士・中小企業診断士)

参考文献・出典

  • 民法第1013条第1項/民法第899条の2(対抗要件主義)

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